話聴き屋 第二話

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「まるで道化師だ。」
森島は淋しそうに呟いた。

仕方がないのよ。

そうやって生きのびるしかなかったんだもの。

ママだってはじめは慰めようとしてくれていたけど、今は客と一緒になって笑うんだ。

でもね、いつまでやってけるのか最近不安が募るんですよ。

このまえ好きだった相手は、

「おれ嫁がいるからもうやめとくわ。ごめん。」
って。はじめは真剣に口説いてきてね、この人なら心も体も許して平気かな。

信用しかけて、三度かな、寝たのは。

そしたらある日突然ソレよ。しかもメールで。

わたしはもう女としての幸せは諦めちゃったわ。

でもさ、急に独り身の行く末が不安に思えてきてね。

そろそろ昼間の仕事も真面目に探さないと、って。

知り合いの小さい貿易会社で、“経理”の口があるの。

ウケルでしょ? わたし。


 森島にはウケなかった。

彼はおもむろに携帯で時間を見る。

あっ、もう時間ですか?

「いや、時間は大丈夫ですよ。あのう、申し訳ないんですが、ちょっとトイレに行きたいのでしばらく留守番を頼めますか?」

 はあ・・・。いいですけど。

「コンビニで借りるんですよ。」

と、森島はさっと立ちあがる。

「ぼくの貴重品があるから、こっち側に座っていてもらえませんか?」

 え?、でも・・・。
   
「心配しないで、すぐ戻りますから。」
 

『 貴方の心に溜まっているマイナスエネルギーを全てこのぼくに吐きだして下さい。

ぼくが貴方を浄化して差し上げます。愚痴、悩み、恨み・・・ヨロズの話、聴かせていただきます。

                     話聴き屋 森島 丈二 二八歳 』

続く

by ケイ_大人

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これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    ケイさん、小説読みました♪*話聴き屋おもしろいです(*´˘`)♡私も特に夢もなく、見た目も別に可愛いくないし、なんか常に悲観的になってしまうんですよねー笑!自分の将来を見ているようで、少し怖くなりました。私も話聴き屋に行ってみたいなぁとも思ったし、身近に話を聴いてくれる人の大切さに改めて気づけた気がしました(*´ェ`*)♡*最終話楽しみにしてます♪これからも応援してます♬*

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自分のために~誰かのために、言葉とセンテンスの職人でありたいと 日々精進しているところです。

言葉から命を吹き込まれた語り人たる登場人物たちが、いつのまにかぼくから離れて個を象るとき、読者の皆様の傍にそっと寄り添わせてやってくださいませ。

あなたが死にたいくらいの時、彼らが少しの役にでもなるなら…

ぼくの幸せです。