仙台牛たん 荒  新橋店

-vol.13- □■食への熱意 ■□

ーー2012年7月27日来訪ーー

 

vol13_gaikan

 

ワンダーテーブルといえば、 モーモーパラダイスやバルバッコアグリルなどを仕掛ける食のエンターテナーだ。

そのワンダーテーブルから、 玄品ふぐを手がける関門海を経て独立した 佐藤大輔氏は、

小伝馬町にビストロタルトを開いた。

氏の気軽に呑めるワインバーに対する構想は、 早くからあったらしい。

今では、新橋でも立ち飲みのワインバーは人気で、 活気ある雰囲気を新橋の横丁に与えている。

先見があったということであるが、 ビストロの名は伊達でなく、

パリの居酒屋を再現したところもある。

フランス料理を気軽に食べてワインを食べてもらいたいという気持ちが伝わる店作りだ。

女性客にも気を遣い、鮮魚と合わせた人目をひくメニュー作りもセンスが光る。

そのメニューの中に フランス風のモツ煮込みがあるのは、意趣深い。

欧の肉食の文化は、本朝はまだ追いつかないほどの奥深さがある。

さて、 仙台で牛たんが名物になったのはGHQ駐在によって、 牛が手に入りやすかったというが、

決してそうではない。

佐野啓四郎は、牛たんという食材の素晴らしさに目をつけ、

これをなんとか名物にしようと苦心した。

その不眠不休の努力の際、山形まで材料を仕入れにいったという。

苦心の末、 杜の都に太助が誕生するのである。

助の字がつく牛タン料理屋が多い。

仙台の喜助、真助、などなど。

太助へのリスペクトなのか、インスパイアなのかは不明である。

新橋にも、利助という店がある。

烏森口にあるのと、ニュー新橋ビルの地下の2店舗を展開している。

当然のことながら、”助”がつかない店だってある。

六本木に構える たんや又兵衛、一徹などなど、 いろんな店があるのは、

それだけ牛たん焼きがそれだけ浸透しているということであるが

流通がよくなったからだけでは、文化となるということはない。

効率と味は往々にして反比例する。

啓四郎氏は、人並みならぬ研究を重ねた。

切り身の厚さ、塩加減、火力、焼き加減 、、、、、、

美味しく食べるためへの絶え間ない工夫が 牛たん料理を産んだのだ。

料理人達の気持ちと努力が旨い料理に結実する。

とりわけ、焼き加減は 牛たんにとっては肝要である。

新橋にも、そんな焼き加減にこだわった店 「荒」がある。

2名で店に入ったので、牛たん焼きを2つ頼んだ。

しかし、出てきたのは一人前ずつ。

vol13_gyutan

片方は、人が食べるのを見ている時間が発生してしまうが、

焼き加減にこだわるこだわりが優先されている。

火を通しすぎると固くなり、食感を損なう。

従って、ただ強火で焼けばいいというものではない。

頃合いをみてひっくり返したりしてつくる 細かい気配りは、

せいぜい一人前ずつの量しか行き届かないのだ。

つまり、大量には焼けないのだ。

切り身の厚さを薄くすれば、いくらか難易度は落ちるのだが、

それではあの噛むほどに あふれる肉汁は消失してしまう。

かといって、 厚すぎても食べにくい。

まさに絶妙な厚さなのだ。 時間がかかるといって、

下焼きして準備をしても風味を損なってしまい、感動する味はうまれてこない。

そういったギリギリの勝負でこの料理は成り立っている。

口に頬張ると、 上品な肉汁があふれ、胃の底が狂喜乱舞する感覚だ。

一人前 1500円は、正直安いと思う。

vol13_menu

店の雰囲気は、落ち着いてどことなくおしゃれでもある。

女性客だけのグループもあった。

お通しは、仙台のセットでは定番の鉄砲漬けを含むお新香

vol13_otoushi

食欲に火が付き、 ゆでたんを頼んだ。

手前が、タン元の部分で一番柔らかく美味しいという説明があった。

vol13_gyutan2

目に自信と満足が現れている料理人から、

直接醤油を肉にかけず、煮汁に含ませるように少量かけてください

といわれた。

ほろほろと崩れつつ、 舌の上で牛タンの上品な味わいが広がる。

先ほど、狂喜乱舞した胃も今度はゆったりと落ち着いた満足に浸る。

けっして新橋らしくはないが、 旨い牛タンを出す店があるということは、

この街の店のレンジの広さを感じることができた。

ワンダーテーブル、関門海ともに、 流通に工夫をこらし、

大量に供給することによって、 エンターテイメントを引き起こした。

そこから独立した佐藤大輔氏は、

そこに、なにか物足りなさを感じたのではなかっただろうか。

しかしながら、 効率を求められる食品業界も、個性とこだわりを追求する店も、荘子の蝶だ。

大量生産できない 牛たん。

こうした丹精込めて料理を出す心意気の良い店も、

新橋の食と居酒屋の文化を支えている。

vol13_hasihukuro

参考:牛たん 荒 新橋店

LINEで送る


これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    ブログ読みましたー(^^)人より理解力が乏しく、何度も読み返してからじゃないとコメントが書けないのが悲しーい(´・ω・`)笑!私の文も、牛たん並みに時間かけてますょぉー笑!※但し、牛たんのような深みのある味わ出せないので、ご了承下さい。写真の牛たんめっちゃ美味しそうですね(((o(*゚▽゚*)o)))ぺらっぺらのやつしか食べたことないから、羨ましいですぅぅ(泣)ゆでたんなんてものもあるんですね!!まだまだ世の中にわ食べたことないものがたくさんあるんだなぁー☆*と思いました(๑´ڡ`๑)焼きとわ違って、通とゆうか、大人な感じですよね//(笑)今度挑戦してみます!ヤーマン(☆˙╰╯˙)

    • admin より:

      ヤーマンさん♪
      コメントありがとうございます!
      牛たん いいっすね・・・ヤーマンさんのコメント読んで
      書いた私も食べに行きたくなりました(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>