近江牛肉店

-vol.24- □■真夏の焼肉■□

ーー2013年7月30日来訪ーー

kanban

 

焼肉の旬っていつだろう。
ふと、そんなことを思う。

四季を通じて味わえばよいことだし、
それなりに味わい方がある。

キムチや、キュウリなどの野菜と
こんがり焼けた肉と一緒に
コチュジャンや味噌などを入れて
エゴマの葉や、サンチュに巻いて食べる
韓国式の焼肉。

骨付きカルビをまるごと豪快に焼いて
はさみで切り分けるというのが
なんとも本場の焼肉を食べているという
感じがある。

寒い時期には、熱いスープなども頼む。
食べ方は実に多彩で、
実は野菜もふんだんに食べられるやり方もあるのであろう。

でも席についたら、
まずは、肉だけを味わうというのがシンプル。
牛タンからいく というのが常道だろう。

実は、寿司屋などでお好みをたべるときに
自分流の形式みたいなものを持ち込んだりもする。

最初は白身からいって、貝などを食べ、
鮪をもらってから、光り物をもらい、
最後はタマゴで〆るのだが、

タマゴの直前はアナゴなどを頼んだりする。
ウニ、イクラをどこで頼むか、いつも決めておらず
いつも迷ったりする。

あまり整った形式ではないが、だいたいそんな感じである。

焼肉も同様で、
牛タンから入って、カルビやハラミにいき、
ホルモンなどを追加するというところまでは決まっている。

それからは、入った店によってバリエーションを楽しむ。
最後は、ビビンパとかクッパ、あるいは冷麺などで〆る。

しかし、今日の店では、その流儀をあえて崩そうと思った。

近江牛肉店

お肉屋さんのようなその店・・・

たしかに外観は、お肉屋さんだ。

しかし、近江牛しか扱わないこだわったお店である。

こだわったお店に対して、こちらもいつもの流儀を捨てざるを得ない。
といっても、いろんなメニューが揃えてあるので、
いつものでもよいのだが、
ここは純粋に牛肉をあじわうのがふさわしいように思った。

現に、その通りとなり、”あて”のキムチなどのほかは
すべて肉しか食べなかった。

近江牛肉店では、牛のいろんな部位、
しかも希少な部位を一切れずつ盛ったお皿が2種ある。

赤身が多く、あっさりと塩かわさび醤油で食べる 赤皿。
脂身が多い部位を盛った 白皿。

まずは、これを頼んでみた。

まずは、白皿。

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バラ肉系の部位が多い。

ちなみに、牛肉は、ロインという
ステーキによくつかわれる部位を除くと、
肩、腹(バラ)、モモに分かれる。

バラの部位からカルビがとれる。

ただ私のような素人が思うほど単純ではない。
バラは大きく、ナカバラとソトバラに分かれ、
中バラと後バラのそれぞれ上部から特上カルビがとれる。

中バラは筋を除いたあとほぼ中央からゲタカルビがとれる。
中バラの下のほうから、カイノミといわれる部位がとれ、

後バラの下部は、ササニクという上質な部分になる。
これを取り除いたあとに、インサイドスカートという部分がとれる。

このように書いていくとキリがない。

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今日の白皿には、
ササミ、友三角、インサイドスカート、ゲタカルビ、カルビの5種
このうち、友三角とは前バラにあたる部分で、肩に分類される。
かたバラ肉ともいうらしい。

 

yaku
肉質がそれぞれ違うが、

名前がついているのは、
それなりの愛着があるからであろう。

たとえば、ハットトリックという言葉がある。

サッカーの1試合で3点得点することだが、
滅多にないことで驚嘆に値することである。

この名前が付いた途端、
選手にとっては目標となり、観衆にとっては賞賛の称号となる。

選手はまた、やろうと思うし、群集はまた見たいと思う。

大事なのはこの反復可能性である。

牛を解体するときに、またあの部位をとりだしたいと
思えばこそ名前がついているのだ。

名前がつくとまた食べたくなる。

ソシュールは、命名される前の名前をもたないものは
存在しないといった。

もしこの美味なる部位たちに名前がついてなければ、
ほかのカルビとともに埋没してしまうことだろう。

 

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相当 脂身ばかり食べたので、
胃がもたれるかと思いきや、

少しずつ味わいが違うせいか
どんどん食べられる。

近江牛は黒毛和牛。
三大和牛のひとつだ。
脂身の融点が低いのであろう。

近江牛・・・・

近江といえば、

淡海の海夕浪千鳥汝が鳴けば心もしぬに古へおもほゆ

という柿本人麻呂の歌があるのは、浅薄な私でもわかる。

近江=淡海だ。

白洲正子にして、日本文化発祥の地といわしめたほどである。

近江商人でも有名だろう。

近江商人は、互いの利が商いの基本だといった。
日本らしい商人だ。

8年前の産地偽装問題は、近江商人の血が絶えたのかと思わせる
非常に残念な事件だ。

BSE問題で飼育履歴(トレーサビリティ)をきちんとする法律が整った。

飼育履歴の中で、一番長い期間、牛が飼育されたところを産地とする
という内容。

つまり、どこかほかの県で育てられた牛を出荷直前に滋賀県に置いて、
近江牛と名乗っていたということだ。

もっとも、消費者の闇雲なブランド志向が
生産者を盲目にしたといってもよい。

でも法律の目をくぐる偽装の問題は、
いつの世にもあるし、正直これからも起きてしまう可能性は十分ある。

しかし、
近江牛肉店のように、きちんとおいしさを伝える店が
それを是正していくのではないかと期待する。

近江の畜産の歴史は古く、
牛の味噌漬けや干肉を江戸幕府や御三家に献上していたという。
食い物の恨みはおそろしいとは、桜田門外の変のことをいい、

政変の原因は、
近江(彦根藩)が御三家のひとつ水戸藩に牛肉を献上しなかったからだ
といわれるが、本当のところはどうか。

江戸時代から牛肉の産地だったことを示す
例え話の亜流と流すのが賢明であろう。

日本は古くから食肉の歴史がある。
しかし牛馬を食する歴史は基本的には明治以降だ。

ひとつには、中国の仏教で牛馬を食することがタブーのため
(中国では牛馬をたべない篤信家も多い)
それにならったことと、徳川家光の国策がある。

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日本は肥育牛の歴史がたかだか40年くらいしかない。
それまでは稲作農耕のために牛が使われていた。
トラクターの普及(1965年)で、飼牛の数は激減した。
200万頭以上いた牛が、155万頭ほどになった。

農耕用から肉食用に転換して、徐々に頭数は復活した。
現在では、440万頭ほどになっている。
このうち、肉用牛は280万頭。

県別でみると、このうち北海道が50万頭でTOP。
鹿児島が36万、宮崎が29万とつづく。

近江牛のある滋賀県は、というと1万8千頭なのである。
たったの、という表現がふさわしいのではなかろうか。

上等なサシの入った牛はゆっくり育てなければそうならない。
出荷までにかかる日数が和牛は通常の牛の2倍。
それだけ高値になるのは当然だ。

こうした上質なお肉は
やみくもなブランド志向で歪んではもったい。
このお店のように、きちんと伝えるお店があるのは素晴らしい。
この店がごまかしても店の得は一切ないのだ。

 

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赤皿も追加することにした。

ウワミスジ
ニノウデ
カメノコウ
カブリ
ロース
の5点

ウワミスジというのは、
腕の肉なかで、一番サシの入る希少部位。

さっとあぶるだけで食べてしまう
その食感たるや、しばし陶然。

ニノウデというのは二の腕。
前足にかぶさっている部位で、
少しかたいが肉の味がほとばしる。

カメノコウは、
モモ系の肉。赤身が基本だが
キメがやや粗く、みると亀の甲羅のような模様が見える。
やわらかい食感で、おいしい。

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カブリ
内モモの下にある丸いかたまりをシンタマといい、
その中心にあるのをシンシンという。
シンシンは上カルビのような霜降りだが
カブリはその周りの部分で、
赤身が多く、さっぱりとした感じが味わえる。

ロースは、
いわずと知れた部位で、ステーキによく使う。
今日はあっさりと、わさび醤油で。

近江牛の魅力は、飼料が自給できること。
風光明媚な土地で育てられたその牛の肉から発する香りは
特有で、それが魅力である。

だから、赤身がすごくうまいのだ。

なんだかキリがない。
結構たべているはずだが、まだまだ入る。

そういえば、牛タンたべてない。

そうだ。
三大和牛の近江牛なのだからと、
頼むことにした。

いつもの順番は無視だ。

順番を無視したついでに、
センマイ刺しをもらうと、
これがなんと、シロセンマイだった。

味噌だれが添えて出てくるが、
もったいないと、
席に着くなり支度してもらっていたレモン汁で味わう。

さっぱりと旨い。
しかも味わい深い。

白センマイは黒皮をはいだものではない。
最初から白センマイとして存在するということである。
個体の差だ。
ともかくも私は断然、白センマイの方が好みである。

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そんな高級な焼肉店でしか出さないような
品々に、驚きだ。

近江は、近江八景でも有名、
八景とは、中国の山水画の画題を瀟湘八景といい、
これが室町時代に日本に伝わった。

選ばれたのは、琵琶湖畔の近江と神奈川の金沢八景である

近江八景は歌川広重が浮世絵にしているし、
落語にもなってる。

江戸時代でも有名な景色のよい場所。

そして、風光明媚な場所で育てられた和牛。

まさに、牛のニッポンニアニッポンではないか。

いまは世界で日本食がブームだが、
そのひとつが、菜食が中心であることがあがる。

服部料理学校の服部氏は、
牛肉を食べると元気になるといった。

なるほど、焼肉はみんな気分上々になるようで
非常に陽気な取材であった。

菜食主義者の一部の説では
肉食は消化に体力を奪われるので、逆に元気を奪う。
養生の方法として断食があるのは、消化器官を休ませるためだ
という。

ライオンが始終寝ているのは消化のための養生という。

なるほど、そうかもしれぬが

酒を飲んで騒いでいるときに、そんなことを云ってもつまらない。

こういうときには、無礼講で
肉を喰らい、陽気に騒ごうではないか。

徹底して和牛の美味い肉を安く食べるのなら
この店はまさにうってつけである。

参考:近江牛肉店

photo by #DoY

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これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    お肉おいしそうですねっ(´;Д;`)♡見てるだけで食べたくなってきましたぁぁ(泣)牛肉をロインって言うとすると、「サーロイン」の「サー」わ何なんですかーっ?めっちゃ旨い!とかですかねーっ?(笑)もしお時間ありましたら、ご回答お待ちしております(((o(*゚▽゚*)o)))!どこかのテレビ番組で「肉わ裏切らない!!!」とゆうTシャツを着ていた方を思い出してしまいました(笑)みんなお肉わ大好きですもんねっ☆♬*いつもいつも雑談ですみません。。更新頑張ってくださいねっ٩(๑˙╰╯˙๑)۶ヤーマン!

  2. TOMOYUKI より:

    ヤーマンさん♪
    コメントありがとうございます。

    サーは、称号の”サー”です

    イギリス王ヘンリー8世が
    あまりのおいしさに ロインに称号を与えたといわれてます。

    だから、めっちゃ旨いはあたらずとも遠からずです!

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