丹波屋

-vol.29 – □■ エキゾチックな立ち食いソバ ■□

2013年4月10日来訪

tanba
死後40年以上経つのにいまだにオペラファンの間で
人気のマリア・カラスは、
トスカというオペラを気に入ったらしく何度も演じている。

トスカは、
ヴィクトリアン・サルドゥの戯曲をもとに、
プッチーニがオペラに仕立てた。

イタリアの政治犯アンジェロッティを教会に隠まった
画家カヴァラドッシと歌手トスカとの悲恋を描いたものである。

サルドゥの逸話に、
パリッシーの霊が乗り移って銅版画を彫らせたというものがある。
それ以前はサルドゥは銅版画などやったことがないというのだから
不思議なことがあるものだ。

新宿中村屋にインド独立活動家ボースが婿入りしていた話は有名である
創業者の相馬氏は
政治的亡命者のインド人を頭山満や犬養毅の頼みでかくまったのである
このおかげで中村屋のカリーが誕生するのである。

内村鑑三とも親交があったというから、この経営者は只者ではない。
だからこそパリのサロンなるものを日本で実現できたのであろう。

関東大震災のときには奉仕パンという安価なパンを提供したという。

相馬夫人はロシア人盲人童話作家の
ヴァスィリ・エロシェンコ
のパトロンだったため、ボルシチも中村屋の商品となった。

社会的に店や企業がやるべきことを
よく把握している老舗だなと思う。

異人の力というと
新橋の男性サラリーマンは、
「女性の力」を思い浮かべる方もいるかもしれぬ。

ニュー新橋ビルの地下は
中国人女性の声がこだましている。
これも異人の力といえそうだ。

ウーマンリブの方からのお叱りを承知で書くと
女性のもつ華やかさがオフィスに活気を与えることも
女性にしかできないものだし、
容姿だけでなく、
ドキュメントをきちっとまとめる能力が
概して女性の方が高いことを認めざるを得ない経験がある。

会社を離れて、
居酒屋の女性が運んでくれた食事に
力をもらう貴兄もいるであろうし、
女将さんに背中を押されるサラリーマンだって多いと思う。
スナックのママに家族円満の秘訣を教わる男性もいる。

新橋は街の装置として いわば”妹(いも)の力”を宿しているのである。

さて、
新橋で、夕飯をささっと食べたいときに、
おすすめな店として
ニュー新橋ビルの豚大学や、天丼あきば、
西口商店街の 亀や
が挙がる。

豚大学については、
拙ブログに詳しく書いたが、
十勝風のうまい豚丼を出す店である。
同経営のスパゲティキングが大盛りであることから
質より量を求める若き胃袋を満たす店という印象があるが
この豚丼は味も上々であるので試してみる価値が十分あると思う。

天丼 あきば
は、揚げたての天ぷらを安価で食べられる店である。
チェーン大手の”てんや”よりもCPが高いという印象だ。
牛丼チェーンをみればわかるとおり、
チェーン系列店の競争は激化している。

競争の激化による食文化の品位の低下を懸念がある。
しかし、天丼のチェーンについていうと、
昔の製法にこだわりすぎて、
観光料金をまきあげているような老害店があるのに比べ
良心的だと思う。

亀や もほかの立ち食いソバとは一線を画した味である。

このように、
ニュー新橋ビルの近辺には安くてうまいものがいっぱいあるのである。

そこに今日は1店舗加えたいと思う。

丹波屋だ。

一見ふつうの立ち食いの路面店。
である。

しかし、入ってみて
カレーを頼むと、ただならぬ店だと知ることになる。

ここのカレーは、とても立ち食い店が出すレベルではない。
スパイシーでしっかりと辛く、コクもある。

そのためか、カレーそばや
カレーうどん というのはメニューにない。

蕎麦屋のカレーでなく、
あくまでも、まっとうなカレーなのだ。
なおかつ、本格的である。
ナンがあったら欲しくなるような味なのである。

店には椅子はなく、せまい。
おばさんと、エキゾチックな女性のふたりで切り盛りしている。

このカレー、この女性の手作りなのだろう。
と思い、中村屋のカレーパンを想起したのだった。

おばさんは世話好きそうな人で
しきりに沢庵をすすめてくれる。

それとは対照的に
孤独なグルメのように、
ここにくるサラリーマンはみな寡黙だ。

どこからかきて、黙々と食べ、帰っていく。

おばさんは、そのなかで
しきりに声をかけ、水をとりかえたりしている。

レオナルド・ダ・ビンチという天才。
この天才は、孤独が好きだったという。

ニーチェが
民衆の一様化を嫌い、
超人のモデルとして彼を扱ったが
実は、寡作で、仕事はどれもが中途半端だったという。

絶えず難問を一人で抱え、悩んでいる。
作品を作っては壊したり、途中で放り出してばかりいた。

バタイユのダ・ビンチへの評価は、
挫折の人、、、

自然世界を人間世界によって作り変えようという企てが
ダ・ビンチにあり、
そんな多様的な諸問題を、
彼はたった一人で解決しようとしたのである。

たしかに
文化は共同体で生まれるという
バタイユのお題目からは縁遠い人である。

我々の生活は、交流なくば
味気ないし、栄えることも決してない。
どの民族にも共通していえることである。
血族でない部族も最低 食卓を同じくする集団なのである。

同じ釜の飯を食べるというが
そういう精神的結びつきは根強い。

もっと書くと
”供養”とは、
死者と一緒に飯を食べることである。

お盆や正月の行事で先祖の分まで食卓を用意する習わしも多い。
聖書でもキリストとともにパンを分けて食べる。

接待は、食卓や酒宴を共にすることで、
結びつきをより強固にするために行う。

そうした文化をともにすればこそ、
栄養摂取から食事に変わるのかもしれぬ。

今日食べたのは、

ミニカレーとざるそば。

写真(1)

たくあんが、妙に懐かしく、
すべて食べてしまうと
先述のように、おばさんが補充してくれた。

通いなれたサラリーマン風の男性が
ワカメは抜いてくれといって注文していた。

目の前には、トッピングとなる
天ぷらなどが並ぶ。

写真 2

ソバとカレーを堪能すると、
蕎麦湯のみますか、ときかれた。

写真 3

つゆがだいぶ残っていたのをみて
すこし捨てますか、とおばさん

蕎麦湯を飲み干すころに、
お水をまたとりかえてくれた。

写真 5

いたれりつくせり。

おばさんに言われるでもなく
エキゾチックな女性が動く。

孤独感がいやされた。

ますます国際色が強くなっていくだろう日本、
外国人といっしょに働く姿は、
これからより見かけることになるだろう。

東京オリンピックへの準備で
国際的交流という意味で
新橋はアドバンテージがあるのかもしれぬ。

異文化交流もさかんな街、
新橋の底力をヒシヒシと感じた。

参考:丹波屋

 

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これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    ブログ読みましたー☆*『エキゾチックな立ち食いソバ』と書いてあったので、一瞬んっ?と思ったんですが、、読んでみて納得でしたっ(笑)もちろん料理の味も大切ですが、気配りがとても素敵ですねっ(*´˘`*)お店も常連の方が多いんだろうなぁーと思いました♬*立ち食いのお店ってせわしなく、どこか落ち着かないイメージだったんですが、ここわほっと出来そうですねっ(*´ェ`*)。私も接客業をしてるので、元気を与えられるようなそんな人になりたいです♡*私事ですみません、、(笑)更新頑張って下さい(๑´`๑)応援してます☆*ヤーマン!!

    • ヤーマン♪さん、コメントありがとうございます。

      家で済ませばよいのに、わざわざ外食してしまうのは
      人恋しさもあるのかもしれません。

      接客業は大変ですね。いろんな人が来ますし、
      人と接することはとても神経使う部分もあります。
      でも、その分とても、やりがいのあるお仕事かもしれません。

      コメントに 元気もらってます。
      人と食との関わりで、元気になる記事を書いていければと思います。
      応援ありがとうございます。

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