家園菜

-vol.34- □■ 肉の苑 ■□

2013年12月26日 来訪

写真

 

2013年の2月に、われわれが「麺ロード」と呼んでいる通りにあるビルが

不幸にも火事に見舞われた。

味之苑という店があったのだが、
そのあと、ずっと空き家であった。

2013年11月に羊肉串を看板とする店ができた。


獣という文字の持つ雰囲気に魅かれて
入ってみようということになったのである。

一階がカウンター、2階がテーブル席
3階には座敷席があるという。

駅にほど近く、人通りも激しいこの新橋西口通りで
3フロアというスケールの店をもつと、
人を呼ぶのに力を入れそうだが、

店主である当のママは、おっとりと姿を現した。

中国の女の子の癖なのか、店の前で立ち止まる人々を
どうぞ、と呼びこんでしまうのを
いいから放っておきなさいと中国語でたしなめていた。

あまりの商売っ気のなさに呆気にとられたのを見てとり

うちは料理が自慢で、うちの料理が食べたい人だけ入ってくればよい
と説明してくれた。

元来、経営者とサラリーマンでは
同じ人間だが、考え方が大きく違うところがいくつかあり、
その中で、経営者を狩猟型、サラリーマンを農耕型と
不作法に分けてみることもできるであろう。

経営者の感覚というが
要は目の付け所や、仕事に対する自分の立ち位置が把握できるか
どうかであり、それはある程度サラリーマンにも必要である。

そういうことを語るのは本来門外漢なので、
気質とでもいおうか。

狩猟型の気質と農耕型の気質があり
これもまた、
どの人にも偏りがあるものの相応に入り込んでいると思う。

食事も菜食主義で胃腸に負担をかけないことを
モットーとしている人もいるし、
そんなことお構いなしに肉を喰らう人々がいる。

精が付く料理というが、
栄養素というよりも、気分の効果の方が大きいように思われる。

普段は菜食中心がよいのかもしれないが、
いざというとき狩猟型も農耕型の方々も
たまには、ドンと強壮に効きそうな料理というのもいいのではないだろうか。

ともあれ、こちらの店主のママは
ギラギラしたところがまったくない。

きけば、玲玲の経営者という。

いざとなれば、そちらから客を引っ張ってくればよいのか。

その余裕からの態度かと思い、訊いてみると
そんなことはしたくないという。

「あちらの店は、餃子や中華料理が食べたい人。
こちらに無理やり引っ張っても料理が違うじゃん。」

と、しらっとした感じで言う。


メニューには、羊、鶏のほか、雉や鹿などもならぶ。

ジビエ料理と書いてある。

ジビエ(gibier)というのは、フランス語で、
本来は狩猟家がとってきた野生の鳥獣の肉を食べる料理である。

材料としては似てなくもないが食べ方は違うのであろう。


正直どんな頼み方をすればよいかわからなかったので
まずは、おすすめセットを頼むことにした。

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おすすめセットは生ビールと
羊肉串が3本、
一品料理がつく。

一品料理は日替わりらしい。
この日は、羊肉と大根の煮物が出てきた。
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羊肉串というと日本ではなじみがないかもしれないが
中国の東北地方ではかなり浸透している食文化である。

羊肉というと私の幼少期にはジンギスカン鍋以外浮かばないが

世界三大料理のトルコ料理では、
それよりもポピュラーなのである。

肉料理の文化は宗教と密接である。

イスラムは豚肉はハラーム(禁忌食物)であるし、
インドでは神聖な牛を食べることは嫌うというか思いもつかないだろう。

羊肉は牛よりも臭いがきついというが
要は、慣れの問題であるし、世界からみれば狭い了見かもしれない。

お高くとまったフランス料理や、イタリア料理でも子羊は
素晴しい食材なのである。

とりわけ、ここ家園菜の肉は臭いがまったくといっていいほどない。


その羊肉は3本でてきた
1本は、塩
この店の塩味は、モンゴルの岩塩をつかっている。
ピンク色である。
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この塩が旨味を増す。



2本目は、麻辣
ピリ辛の味付けがしてある。
犬を食べる食文化をもつ延辺料理の味付けだ。

3本目は、新疆
ウイグルの味付けである。

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ウイグル料理は、トルコの影響下の味付けを強くもつ。
ウィキペディアによれば、
「ウイグル料理は清真料理(ムスリムの料理)であり、必ずハラールの食材を用いる。
地方によっては鹿肉や鳩などの野鳥も食用にされる。」
とある。

さらには、
「香辛料としては、トウガラシ、クミンが多用され、ショウガ、花椒、フェンネル、
カルダモンなども用いる。」
とある。

エスニックな異国情緒がダイレクトに
肉にのっかり、どっしりと伝わってくる。

これは、精がつきそうだ。



ママが云うには、
ここは料理屋、その店の料理を出すことが
私の仕事。
経営はあとからついてくると余裕綽綽であった。



新大久保などで、羊串をたべたことがあるが
たしかに、こちらとは肉質が違う。

こちらのが断然うまい。


ママの余裕を裏付けるように、
だんだんとお客はついてきているようだ。
こうして食べている間も、お客さんがぽつぽつとやってくる。

ママの悩みは、秋冬はいい肉が入るが、
夏はどうするのか、思案中という。


そんなことを聴きつつも、
小龍包の字が目に入った。


ママは、これを新橋で一番にしたいという。
やっと経営者らしい気概をのぞかせた。

たしかに美味しい。

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さすが、玲玲の餃子を作り上げる店の
小龍包だけのことはある。

小龍包や水餃子で大事なのは
皮である。

自分たちで作った厚めの皮だからこそ
餡の肉汁を閉じ込めることができる。

また、冷凍にすると穴がどうしても空いてしまうため
手作りと、その場でつくるに限る。



さて、看板料理を食べたあとはどうしたらよいだろう。

迷った私に助け舟を出すよう
肉質をしきりに自慢するママ。

素直に従って注文していくことにした。

雉と鹿が自慢だとのことである。

 

雉は、鶏よりも多少臭いがあるが
香りといってよいほどかぐわしい。
雉肉の本来の匂いなのだろう。
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鹿は、個体数が増え、農作物でも被害で出ており、
ジビエの流行に乗って、もっと食べてほしいという県もある。

食べてみると、ミルキーな香りとコクの深い肉で
とてもおいしい。

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昔、マタギの人に聞いた(又聞き)のだが
鹿は血が美味いという。
まずは仕留めると、血をすするという。

凄惨な光景にも思えるが、狩猟人のもつ勇壮さも感じる。

ジビエが日本に入ってきたのは、1990年のバブル期である。

同じ頃には、サッカーの流行とともに、
シュラスコというブラジルの肉料理も入ってきた。

まったくの私見だが、
経済的な発展には、肉料理が流行る。


2014年はどんな年だろう。

肉料理がバンバン流行ってほしくもあるし、
それにともない、日本の気品を伝える料理も
バランスよく流行ってほしいとわがままをいってみる。

肉を喰らうとは、要はギラギラとすることである。

再び活気ある日本の姿が目に浮かんだ。

 

参考:家園菜

 

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これまでのコメント

  1. piyopiyo より:

    https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13162031/

    によると、、、、
    閉店したみたいです

  2. onozi より:

    このお店、いい意味で、新橋らしくなくてオシャレだなっていう記憶があります。
    閉店ですか。残念ですね。

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