中国家庭料理 玲玲

-vol.14- □■中国の醤 ■□

ーー2012年9月5日来訪ーー

 

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世界三大料理という言い方がある。

フランス、トルコ、中国を指すらしい。

どれも世界各国で馴染みがある料理である。

世界の高級なホテルではフランス料理が供されているし、

日本の都市の街角でもドネルケバブの屋台がみられる。

中華料理に至ってはヒマラヤの麓でも中華料理屋があるそうだ。

いわずもがな、新橋にも新橋亭という大店(おおだな)があり、

烏森側にも、蘭苑(※1)という うまい店が点在する。

ニュー新橋ビルの地下1階も若い女性が店の中に誘う声掛けをする姿がよくみられる。

名物といってもいいであろう。新橋と中国の魔都はどこか似通っているのかもしれぬ。

三大料理にインドが入っていないのは、分類方法によるのであろうが、

手落ちとしか思えない。カレーは世界中どこでも食べられる。

お歴々の分類に異を唱えても仕方がないが、帝国の成り立ちと関係があるという。

ならば、フランスではなくローマであろうし、トルコでなく、ペルシャであろう。

ローマの料理は、単純で素朴であるが、これがイタリア料理の祖先である。

ワイン、オリーブ、パン、チーズといった食材が肉や魚とともに並ぶ。

ペルシャは羊肉をよく食べ、臭み消しの香辛料が特徴的であり、 インドに通じるところがある。

中国料理も原型をつくったのは秦・漢の大帝国時代である。

ローマと中国には共通点があり、 ローマのガルム、

中国の醤という魚の塩漬けから作った 調味料がそれぞれ形成された。

香辛料は、ヨーロッパが胡椒を珍重したので、交易盛況の一因となったが、

中国とインドの使う香辛料は共通といってもよい。

中国には五香粉を肉や魚の下味に使用する。

桂皮、丁字、花椒、小茴、八角などからなる。

インドでもガラムマサラという混合香辛料がある。

ターメリックは、生姜のようで、身体を温める作用があるが、 医食同源ということでは、インドのカレーも薬膳といえる。

つまりはウコンのことである。

小茴の西洋名はフェンネル、丁字はクローブと呼ぶ。

フランス料理はバター、イタリアはオリーブとニンニク、トルコは香辛料と

それぞれ食材を特色をもつものの、 それぞれが混じりあって、複雑に分化して今日に至っている。

帝国がその料理を高めたのだから、 それは高級感のある海老チリや北京ダックが名の知られた料理であるが、

それを毎日食べるわけではなく、 中国では日常、家常料理と呼ばれる家庭料理を食べている。

秦や漢以前は粟やヒエだったのが、 小麦にとって代わったのであるから、

帝国の財力や権力がなければそういった改革はならなかったことであろう。

小麦は中国では麺と呼ぶ。

長細く加工したものも麺であるし、万頭も麺からできる。

餃子の皮だって麺だ。

中国の家庭料理で、 私が真っ先に浮かぶのが、 干豆腐である。

豆腐を板状に乾燥させたものを細長く切り、香菜と一緒に和えたものである。

中国家庭料理では思いのほかシャンツァイがよく使われる。

西洋名はコリアンダー。

インドや、西洋でもよく使われる。

日本料理では使用しないが、なぜか、日本で食される香菜は日本産であり、 中国にも輸出していることもあるらしい。

コリアンダーも肉の臭い消しの役目があり、 中国にはシルクロードを通じて羊と同時期に伝わったという。

他に、ジャガイモの千切りの炒め物や、 トマトと卵の炒め物、豆苗や、空心菜の炒め物などが思い浮かぶ。

野菜料理ばかり並べたが、 ニンニクの芽と豚肉の炒め物もよく食される一品である。

卵も鶏だけでなく、ピータンなどもよく家庭で食されるが、 家鴨の卵(主に塩漬け)もポピュラーである。

そして、なんといっても餃子であろう。

中国では新年などにも出される。 日本の餅のような感覚であろうか。

餃子は、お金を意味するらしく、縁起を担いで沢山食べられる。

そんなこんなで今日紹介するのは、 餃子の美味しい店「玲玲」

ここは、中国家庭料理の隠れた名店である。

麺ロードと私が勝手に名付けた西口商店街を進み、 居酒屋チェーン天狗が見えたら、右側の2階にある。

風情あるぼんぼりを見上げて、狭い階段を上がって入店。

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お通しから、干豆腐と、煎った落花生が出された。

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餃子にはビールだろうとまずは一杯。

ここもサントリーである。

先日ご紹介した 牛タンの荒もサントリーしか置いてなかった。

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プレモルは ライバルのエビスを出荷本数で抜いたらしい。

上海で、青島ビールと業務提携したという。

レバニラや、麻婆豆腐などおなじみの料理が並ぶが、 メニューにはフカヒレの姿煮などの高級食材も混じっている。

値段をみたらとても手が出ない金額なので飾りなのだろう。

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空心菜がオススメときいて、まずはそれを頼んだ。

空心菜は 火が通りやすく 手早く炒めないとシャキシャキした食感がしない。

また、しっかり炒めないと独特の粘りと風味がでない。

このため、強い火力で一気に調理するのだが、家庭料理といえるのだろうか。

実は、腕の見せ所の料理なのである。

出てきた。

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次々と箸が進む。

中国の人の作る餃子の特徴は、 基本は、皮が厚いこと。皮も手作りなのだ。

それから具材にキャベツだけでなく、ピーマンや、セロリが入ることである。

そもそも焼き餃子は珍しく、水餃子が基本だ。 手作りの皮は水餃子でこそ真価を発揮する。

もちろん、各家庭で味付けが異なる。 このバラエティが魅力だ。 今日は あえて焼き餃子を頼んだ。

この店でも餃子を頼んだとき 嫌いな野菜があるかときかれた。

ピーマンやセロリなどが入ると味わいがしまり、さっぱりとするのだが、

まさにここの味はズバリでそれであった。

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大きめだ、ジュワッと肉汁が出る。 それでいて後味がよいので、

何個でも食べられそうなくらいサッパリとしている。

餃子自体に味付けする店もあるが、 ここのは薄味である。

なるほど、これなら沢山食べられる。 皮に香ばしい羽がついているため、

タレもよく沁みて、薄味の餃子とも相性が合う。

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日本人が焼き餃子を好むといえば焼く 薄味が好きだとみれば、そうする。

祖国の味をその場の風土に合わせている。

この羽もしかりだ。

家庭料理とはいえ 押し付けにはならない こなれて 揉まれて 味が形成されていく。

そうして残って行ける土台があればこそ、三大料理という冠がつくのであろう。

一気に食べてしまった。

先述の醤(ジャン)は、醤油でなく、日本の味噌に近い。

前漢の時代に大豆を発酵させて作る黄醤が出来上がり、食卓を豊かなものにした。

これを鶏卵と一緒に炒めまろやかなタレにする。

サニーレタスにこのジャンをつけ キュウリやニンジンと香菜と一緒に手巻き寿司風に食べることもあるという。

この店には、醤油、酢、ラー油の横にニンニクと炒めたジャンが置いてあった。

これを餃子のタレの中に入れたので味に風味が増した。

他の料理をとも思ったのだが、 次回の楽しみとすることにした。

新橋は、料理のレンジが広くレベルが高いなぁとつくづく感じた。

 

参考:中国家庭料理 玲玲

 

==編集雑記==

※1 現在は移転のため閉店。

 

※この蘭苑は2月末に移転閉店となった

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これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    ブログ読みましたー(^^)なんかいつも夜中に見ちゃって、こうなるって分かってるのに、お腹がすくパターンですねっ(笑)またまた私の大好きな御三家の記事がーーー(((o(*゚▽゚*)o)))笑!フランスと中国わまだ分かるんですが、なぜトルコなんですかねー?「お昼、和洋中だったらどれがいーい?」とかよく言うじゃないですかー!日本もランクインしてもいいと思うのにーヽ(;▽;)ノこの会話も日本だけなんですかねー??世界的にわトルコのが有名なのかなっ?まだまだ知らないことばかりです。あー餃子食べたい♡夢で食べれますよーに٩( ‘ω’ )و☆♬*ヤーマン!!

    • admin より:

      ヤーマンさん♪
      コメントありがとうございます!
      そうですね、日本料理もいまや世界中でブームになってますので
      そのうちランクインするといいですね!
      日本は世界中の料理が食べられる国のひとつです。
      その恩恵は底知れないものがあります!
      いろんな料理を食べて紹介していきたいです。

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