串かしく

-vol.22- □■痛快な串■□

ーー2013年6月25日来訪ーー

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串揚げのお店である。

飲み物は、ハイボールを頼んでみた。
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お通しのきゃべつは、
串の合間にとてもよいであろう。

あとで気づいたことだが、
このキャベツ お代わり自由だ。

とても気の利いた良いお店だ。
入った瞬間からわかる。


串かしく

ニュー新橋ビルの地下一階のお店である。
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池波正太郎の小説に
谷中・首ふり坂という短編がある。

幼少を病弱ですごした
ひよわな男が 格式高く威厳ある武家の婿養子となる。

武家の妻の閨房の所作に嫌気が差していた
彼は、悪友の誘いにのって
谷中の茶屋に息抜きに行く。


そこで出会った大女に魅せられて
とうとう武家から遁走してしまうという
なんとも身勝手な話なのだが、

正太郎の筆は、身勝手を咎めずに、
むしろ爽快に描いているように思える。

その大女は、とにかく力持ちで
米俵を片手でひょいひょいと投げてしまうほどで
男はただ立ちすくむばかりといった
シーンが印象に残る。

まっすぐで素朴な魅力が
男の繊細なとまどいと
遁走といった思い切った行動
のギャップを埋めたともいってよく、
はたから見ると
収まるところに収まったと得心がある。

料理にも
素朴さや豪快さが魅力な部分もある。

たとえば、カツオのたたき
は藁の炎でカツオを皮目を焼き、
すぐに氷水につけて、大ぶりに切って出す。

旨さを引き出す理にかなっている
といえばそうなのだが、
まずはこの調理法をきいただけで
お腹が空いてしまう。

この調理法で必要なのは串であるが、
串というのも脇役でありながら料理では
重宝するものである。

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鮎であったり、鰻であったりと、
活躍の場は数知れない。

てんぷらも昔は屋台で人口に膾炙したという

江戸の大工、左官、鳶や商店の奉公人が
立ち食いできるように
串刺しで提供されたのを
屋台でつまみ食いしたのである。


“あて”にタコキムチと
つかさず、
串かしくで定番の5本セットを注文した。
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串で食べること、
その魅力ははかりしれない。

世界各地で串は散見される。

フランス料理にだって串はある。
ブロシェットという。
京都のブロシェットという店では、
フランスの串料理の魅力を伝える。

そういった店はワインが似合うのであろう。

一品の量というのを決めるのは器によるのであろう。

皿であったり椀であったり小鉢であったりする
スプーン一杯で一品をつくるフランス料理もある。

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串もその単位のひとつで、小世界をつくれる。

串を使って
贅をちりばめて小品に仕上げるという趣向
はとても良いのだろう。

道頓堀の串の坊などの店が好例だ。

四季折々の
旬のネタや定番のネタを含め数十種類も用意してあり、
たいていの人は”おまかせ”を注文する。

順次一串ずつ揚がって出てくる。
次になにが出てくるのか
楽しみであり、それも一興であろう。

胃袋の具合をみてストップをかける。

タレというか味付けも
ポン酢や、しょうゆ、ソース
塩、レモンなど、どれで味わうのか
お好みで選ぶ。
上品で、バラエティに富んでおり、
女性に人気などもうなづける。

こうした上品な店では逆にみかけないが、

ひとつひとつ串から外して、
箸で食べる人もいる。

複数人いる際に
全員の分量を考えての配慮かもしれないし、
上品さを考えてのことかもしれない。

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しかし、串の本分は、
独占にあると思う。

レバーならレバーという部位だけを集めて食べる。
なんとも野性味が刺激されてよい。

鰻の頭のみ集めて出す
カブト(新宿思い出横丁)という店もあるが
特にそんなことを感じる。

原始的だからこそ世界中にある。
そして、なんだかおいしさも増して感じる。

駄菓子屋の”よっちゃんいか”などは
串であったからこそ、ヒットしたのかもしれない。

 

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串で食べるのは粗野でよいし、
ナイフやフォークで、あるいは箸で食べるより、
会食の親しみも増す。

まさに”箸いらず”というわけだ。

焼き鳥、焼きとん に共通する新橋らしい風景である。


串料理の魅力はさまざまであるが、その中でも
素朴さや串の直線に見える”まっすぐさ”がなんともよい。

”箸いらず”の手軽さが人々の心が開き、
そこから直球の会話がはずむ。
串刺しという残酷な印象を与える言葉も、
本音を引き出すのに一役かうのかもしれぬ。

焼きとんも焼き鳥も、この痛快さがあればこそ
新橋に多くあるのではないか。

この
串かしく

ネタは単純、メニューは材料表なのかと見紛う。

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串揚げもこれほどシンプルなのは痛快だ。

しかし、見直した。
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玉ねぎや、
うずらは、串揚げがこの食材を一番おいしく食べる方法ではないか
などと考えてしまう。

当然追加した。

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アスパラ、鮪、シイタケである。

鮪には味が付いているというので
意外だったが、薄く塩味がふってある。

あっさりと鮪のうまみを味わうことができる。

アスパラをソースにくぐらせ
頬張る。

はふっはふ と旨い

ハイボールをぎゅーっと流し込む。

ぷはぁ・・・・

しいたけをソースにくぐらせ頬張る。
はふっと、そしてハイボール。

永遠に終わらせたくない心地だ。

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アナゴにレンコン

アナゴは大ぶりでこれはお好みで醤油でもいいそうだ。

あえて塩で甘みを味わうのもいいだろう。
天ぷらと同様の楽しみだ。

うん、うまい

そしてレンコン。
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大ぶりのレンコンを
ソースにつけて頬張る。

はふっとする。んほっ!うまい。
感動だ。
自分で卓上の練り辛しをつけ
辛しレンコンにしてみたりした。

とても楽しい。

素材の余計な水分を取り除き、
カラッと揚げた食感と相まって
本来の味が導き出される。

揚げたてを
ソース壷にくぐらせるのだが
うす衣なので
かえって素材そのものの味が活きる。

痛快だけではなく
美味しさにもよくかなった料理だと
得心がいった。

店員さんたちの繊細な心配りも
うれしい。


谷中・首ふり坂の大女が、そそとして頬張る姿を
思わず想像してしまった。

通ってしまいたくなる
名店の発見は大きい。

今夜もよってみようと思う。

参考:串かしく

photo by #DoY

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これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    クオリアリズムさま♡ブログ読みました(^^)かしくの意味が分からなくて少し調べてみたんですが、「おそろし」や「かしこい」と言った言葉が出てきました!お店の方に聞かないと本来の意味わ分からないかもですが、最初串かくしかと思って、なんで串屋さんなのにかくすのかなぁと思ったら読み間違いでした((((;゚Д゚)))))))笑!串あげって美味しいですよねー☆♬*私わ色んなものをずーっと食べてたいタイプなので、お店のスタイルが好きです(*´˘`*)アイスバーわ串とわ言わないですよね?(笑)もし串協会とかあるなら、ぜひアイスも仲間に入れてあげて欲しいです♡未来に期待しよう\(^o^)/!なんとも自分勝手なコメントですみません(笑)更新頑張って下さいっ☆*ヤーマン٩(๑˙╰╯˙๑)۶

    • 根上 より:

      ヤーマン♪さん
      コメントありがとうございます!

      串かしくは  おそらくですが
      上から読んでも、下から読んでも
      ”くしかしく”ということで つけられたんだと思います。
      アイス! そうですね。
      箸いらずなところはたしかに、串類だと思います。

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