そば処 かめや

-vol.5- □■明日へ向かう帰り道■□

ーー2012年8月25日来訪ーー

vol5_kanban
仕事に生きがいや自己実現の場を求める人がいる。
どういう仕事であれ、また、趣味であっても
生きがいを持てたその人こそ幸せであろうと思う。

サラリーマンという仕事に誇りを持つ人もいるだろうが、
そうでない人も違う具合に誇りをもって欲しいと思う。

サラリーマンの悲哀と誇り。
それに気づいたのは、新橋という場所に来てからだろう。
私はサラリーマンにエールを送り続けようと思う。


今夜も居酒屋の暖簾をくぐり、
自分探しの真似事をするのだが、最初から答えは風に吹かれている。


くぐれば、こんな声が飛び込んでくる。

「あの部長だけはほんとにしょうがないよ!」

お決まりの科白(クリシェ)。
会社でいったら ”おおごと” である。
だから、ここで叫ぶ。

私の若いころは、(こんなことを書くと叱られるかもしれないが)
そんな風景が嫌であった。
”なんで上司になんで堂々といわぬのだ。”
 そう本気で思っていた。

でも、実は、いいたいわけでもないのだ。

「まぁ、部長もさぁ、上から無理難題を押し付けられていると思うよ 、、、
だけど、あれはないよな たしかに、、、」

そういった声が聞こえたかと思えば、
キャリアウーマンの嬌声が聞こえたりもする。

「あの上司、 あたしが苦労して相手してるクライアント何だと思ってんだろう。
ほんっと 風見鶏でいい加減で、もぉやってらんない。。。」

ポリフォニーの洪水の中で、
おぼつかない手つきで酒をつぐ。

主体を持ちながらも、流れに身を任せる。
そんなノマド的なバランスがサラリーマンにとっては肝要なのかもしれない。

新橋のたくさんの暖簾やネオン中で、
どの店に入るのかを選ぶのは、ちょっとした勝負であったりする。
勝負ゆえに負けるときもあり、
入った瞬間、”しまったぁ”
と思うこともある。

なにを決め手に暖簾に手をかけるかは、
そのときの気分によるとしかいいようがないのだが、
先客の様子で決めることもしばしばである。
ガラガラの店には入りズラい。
かといって、混雑している店も躊躇してしまったりする。

理論一辺倒ではいけない。
不合理も人間の持ち合わせたものである。
ままよ!
と刺激を求めて飛び込む店もある。


初めての店でカウンターというのも
気が引ける。
奥のテーブルが空いていればそこに座る。

実は、この辺りですでに勝負はついているのかもしれない。
とにかく入ったからには何かを頼む。

さて、なにを頼むか。

寿司を頼むときには、自分なりにコース料理に見立てて頼むと どこかで書いた。
白身からいって、前菜に見立て、
好物の光り物でアクセントをつけながら、
最後は穴子で〆るといった心づもりでいる。

心ではきまっていながら、
次になにを食べようか逡巡している時間も楽しみたいという
二つの欲望の抑揚を感じるのがよかったりもする。

さて、お通しがでてきた。
まずは、ビールというのが定番だが、
やはり料理に合わせたい。

池波正太郎の蕎麦屋での過ごし方も参考にしたりもする。

居酒屋では、すぐに来そうなツマミ
(冷やしトマトだの 枝豆だの)
と、
揚げ物などの時間がかかりそうな一品を一緒に頼む。

揚げ物がすぐに出てくるような店は
興ざめだったりするのだが、
ともかくも、期待しながら時間差が生じる肴を頼み、
後発のメインディッシュをチビチビやりながら待つのである。

好物や、肉・魚のみを頼むことはあえてしない。
抑揚を楽しむのがよいのである。

ーーひと欠片の不幸せとひと欠片の幸せと 本当はふたつを欲しがる♫ーー
いきものがかり(明日へ向かう帰り道)


人間関係で悩む人がいたら、居酒屋にいってお銚子を傾ければよい。

「でもいいよ お前はなんてったて部長がお気に入りだからさ」
なんて声をききながら。

自分の会社に100点をつけられる人は、そういない。

それどころか
みかけと実情のギャップにヘキヘキする人もいる。

「うちは実は、やばいんじゃないか?」
という言葉は、しばしば耳にする。
矛盾を解決するヒーローに居酒屋ではなる。
本当に解決するわけでもないかもしれないが、
糸口にはなるのかもしれぬ。
居酒屋が会社を救うとまではいわぬが、本音を語る場はやはり捨てがたい。

最近は、ウチノミが多いというが、
なるべく憂さは居酒屋ではらして家路に帰るのがいいのではないだろうか。

オンオフをうまくサーフィンするのも 楽しいことである。


居酒屋も、入った店が100点というわけではない。
店選びは、楽しくもあるし、疲れているときには苦痛である。
気づいたら、いつもの店のカウンターに止まり木ということもしばしばあるものだ。

店選びに失敗していながらも、酒で胃が刺激されると、
若いときなら ラーメンで〆ることもあった。
が、この年になると少々きつい。
でもなにか、ちょい足し的に腹にたまるものを。
そんな胃袋の状態(気分)のときに、
新橋にはいい店があるのをご存知だろうか。

そば處 かめや

という店が それである。

烏森口を出て、新橋西口商店街にはいり、3ー4軒歩くと左手にある。


立ち食いそば屋さんなのだが、
ほかとは一味違うソバが味わえる。

トッピングのかき揚げも旨い。
vol5_menu

もちろん、値段からして飛び切り上等とはいかないが、
また食べたくなる。そんな味なのである。

サラリーマン賛歌に立ち食いソバはひと華。

vol5_soba
かくいう私も
ときどき ほかの立ち食い店に入ったりするのだが、
どうしてもこの店と比べてしまい、
ついには、足が遠のくようになってしまった。
つまりは、”かめや”のせいでほかの立ち食いソバは
食べなくなってしまったのである。

居酒屋のざわめきの中から出て、
その余韻を おとなしく噛み締めながら
ソバに舌鼓を打つ。

そんな風に新橋の夜を感じて過ごすのも一興である。

ーー細く狭いこの道のゆくさきには 変わらない温もりが僕を待ってる♫ーー
いきものがかり(同上)

参考:そば処 かめや 新橋店

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