ひょっとこ

-vol.19- □■普段着の居酒屋■□

ーー2013年3月13日来訪ーー

vol19_hyottoko

変化がなだらかで、ゆっくりと進む。そんな印象の時間がある。
おだやかに、だんだんと変化していく時間も多くある。
それに対して、
変化が急激で、記憶にとどまる前に
大きなことが起こってしまうことも多々ある。

1900年代初頭、アインシュタインが相対性理論をとなえるやいなや、
ハイゼルベルク、シュレーディンガー、ディラック、ボーア
といった次々と天才たちが量子力学を確立していった。
その後30年以上、科学者たちはその理論の検証に追われる。

注目すべきは、同時代を生きた天才たちの
ものすごくて、すさまじいパフォーマンスである。

たおやかなる呼吸は許されず、息もつかず走り去る時のながれ。
1945年に核爆弾が破裂するまでその勢いはとまらなかった
といってよいかもしれない。


多くの情報が飛び交う昨今は、
情報の濃いと薄いをかぎわける嗅覚を奪われている感じがする。

本来の時間の流れを捉えるには
情報の取捨選択が必要であり、
選び取りのためには物事の本質をとらえる哲学が必要だと思う。

情報が空虚な空回りをしていると思うのは1995年にWindowsというOSが
インターネットを爆発的に全世界にばらまいたことが大きい。

それまでは、情報を発信する筋道が限られており、
しかるべき手続きを経なければ手に入らなかった。

それはそれでよかったのかもしれぬ。

思えば、95年を用意したその前の十年というもの、
60年安保、70年安保を経てイデオロギーも落ち着きをみせて、
成熟した経済のもと、やっと大衆が本当の力を獲得してきた。

産業がこぞって、しかも大股でIT化に向かう前のこの10年は、
情報の嗅覚がまだ麻痺していなかったと思ってもみるのだが、
そのあとに起こるバブル経済の乱気違いな騒ぎをみると
いつの時代も変わらないのかもしれないとも思う。

それでも、”1985年”という年は、濃い一年だといえる。
そして、濃い薄いが判断できる最後の年ではないだろうか。

この1985年は、
田中元首相が政界を病気のため退き、
ソ連のチェルネンコも死去した。
プラザ合意により、円が100円台に高騰した。
東北新幹線が開通し、大幅なダイヤ改正が行われ、
東海道新幹線も100系車両が登場した。

夏目雅子が白血病のためなくなり、
8時だよ全員集合が終了。
北の湖が引退し、
阪神タイガースが20年ぶりの優勝を飾った。

このあとバブルに流れ込むまで、
いろんなブームの仕掛けに、
人々が心地よくのっかる時代だった。

この後から現在まで、
ブームについて、
仕掛けが暴露されながら
なかば、しらけながらノル時代となる。

僕が居酒屋がすきなのは、
いまも昔も変わらないものを求めているのかもしれない。

ひょっとこは、ニュー新橋ビルにある。
昭和を思わせるポスターが店外にはってある。

つまみも奇をてらうものがなく、
酒の肴にぴったりの趣向。

実にいい。いいではないか!

グルメな食事は飽きるが、こういうものは飽きない。

ブームといわず、流行を追わず、
自分はこれ!って決めたものがある人がいる。

それを押し付けられるのは嫌だけれど
そういう人を見るのは楽しさもある。

ビールはこの銘柄!
つまみはいつもこれ!

変化はないが、そこに普段着のよさがある。

ここには、サッポロの赤星がある。
これにこだわる人も多い。

vol19_biere
そのこだわりに根拠や理由なんか不要である。
こだわること自体を楽しんでいるのだから。


お通しは、メンマである。

突き出し、つまりはお通し
については3系統に分類できる。

どっちが上でどっちが下ということもない。
よければ値段をとられるだけなのだ。

一番多いのが流用派。
普段のメニューにあるもの、あるいはその一部を
突き出しに出すタイプである。

たとえば、韓国料理屋でナムルがメニューにあるとすると
そのモヤシを使ってお通しとするのがこれだ。

つづいては、大衆派。
メニューにのせるほどのこともないような品だが、
すぐ出せて、酒を飲ませることができる。
こちらもアテとして楽しくもある。
乾き物で代用するところもある。

入念派は、
メニューにないが、洒落た一品を挨拶代わりに出すタイプである。
客としてはお勘定をある程度覚悟する瞬間でもある。
料理の腕やおもてなしに自信があるタイプの店に多い。


ひょっとこのお向かいの だいだい が流用派、
ちいち が入念派なのに対し、ここは大衆派だ。

すぐに食べ終わることなく、
料理が出される隙間を、これでつなぐこともできる。

まずは、もつ煮込み
定番だ。

vol19_motuni
おっと、やられた。 
うますぎる。

新橋は、もつ煮込み選手権があれば、優勝だ。
もつ煮通りのある浅草なんかが対抗馬だろうが、
あちらは大関。こっちは横綱である。

ひょっとこ、だいだい、ちいち
を新橋もつ煮御三家と呼ぶことにしよう。


ほたるイカ 沖漬け
これも定番だろう。

vol19_hotaruika

これもいい! 実にいい。
あっという間になくなることもなく、
酒に実によく合う。海の旨みと、
そして居酒屋に来たうまみをとことん感じる。

納豆のスタミナ和え
納豆とオクラに沢庵と長ネギを和えたもの。
海苔にディップして食べる。

vol19_bakudan
なにげないものだが、とてもおいしい。
また飲みたくなる。

ビールを追加し、
ソラマメを頼んだ。

岩塩があわせてでてくる。

vol19_edamame

さや から取り出し、
少し岩塩をつけて 口に運ぶ。

うん。うまい! 

何時間でも此処にいたい気分だ。
現実問題 まだまだ居座れるだろう。
友人が 終了宣言をして、smileに促すとわれに返った。

昨日からの風邪がいつのまにか治っている。

外国人のお客人が隣に座った。

こういう居酒屋に来てくれるのは、非常にうれしい。

なぜか、誇らしげな気分になった。

参考:ひょっとこ

 

==編集後記==

いついってもこの店は混んでることが多いです。
人が集まる店はなにかもっている。でも、意外に食べログとかに投稿はありません。
みんながとっておきにして、流行ってほしくないということでしょうか。
居心地がとてもよい店です。

とびきり贅沢なメニューが並ぶわけではありませんが
ほっとできるような普段使いできるお店を
みんなが求めているのかもしれません。

LINEで送る


これまでのコメント

  1. ヤーマン! より:

    ブログ読みました(^^)ノいつも表現豊かで凄いです!私だったら…甘い、辛い、酸っぱい、苦いなど、写真をみたらある程度分かることしか伝えられないと思います(´・ω・`)流用派、大衆派、入念派なんて言葉わ、元からある言葉なんですかっ??お通し1つでもそうやって考えると面白いですね(((o(*゚▽゚*)o)))あと個人的に「御三家」とゆうフレーズに食いついてしまいましたー笑!最近のお気に入りなんですぅー笑!ブログ楽しみにしてるので、これからも頑張ってくださいねっ╰(*´︶`*)╯♡ヤーマン!!

    • admin より:

      ヤーマンさん♪
      コメントありがとうございます!
      私は、味を伝えるプロになりたいのです。
      でも、あくまでも味は主観。どうしておいしいと思ったのかを正直に書いてます。
      私がおいしいと思ったとしても人は美味しくないかもしれませんよね。。。
      ある程度、客観的なことも書かないと理解ができなくなってしまいます。
      そんな中で、流用派、大衆派、入念派なんて言葉を便利に使ったりもしているのです。
      もともとはあるかもしれませんし、ないかもしれません。
      居酒屋についての本の流用かもしれません(笑)
      御三家って本来は徳川家に仕える家の中でも別格あつかいな三つの家を指すらしいです。
      「たくさん素晴らしいのがあるけど3つ選ぶならどれ?」
      ということでしょうか? 
      新橋にはたくさんモツ煮込みがおいしいところがあります。
      でもだからといって、御百家っていったら、どの道迷っちゃいますね。。。
      ある程度 決めつけて書かないとわかりにくいのでそのあたりのバランスには
      いつも苦心してはいます! 応援ありがとうございます。
      これからもよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>